『顎』の基礎知識
  

『整顎』(せいがく)とは、文字通り『顎を整える』施術ですが、それがどのようなものかを具体的にご説明する前に、なぜ今、『顎』に注目するのかをご説明します。

『隠れ顎関節症』も含め、現代人のなかには顎に不具合のある方が多くいらっしゃいます。顎の不具合が原因で体の不調が起こるのですが、そのこと自体を知らない方が多いのも事実です。

そこで、まずは顎と体の不調との関係を知り、体の不調を改善してほしいという思いから、本協会を立ち上げました。
*顎に特別な違和感や痛みがなくても、顎関節症の症状があること
 

実際に、「顎が痛い」「音がする」「口が開かない」「ものが食べられない」となったとき、皆さんはどこで診てもらいますか?
多くの方がパッと思いつくのは、歯科医院ではないでしょうか。
しかし、歯医者さんが診ているのは、噛み合わせや歯にかかる圧力など、あくまでも歯を中心としたものであり、顎全体を中心に診るわけではありません。

顎は骨格の一部であり、歯や歯茎、下顎や上顎すべて含めて骨格が形成されています。ですから、歯だけに着目するのではなく、まずは骨格を矯正しないと症状は改善しないのです。

たとえば、ドアの立て付けが悪い時に、うまく閉まらないからといって、必ずしも「ドアを削ればいい」という結論にはなりません。柱やドアのフレーム、もとより建物自体が歪んでいる可能性もあるのです。この例でいうと、ドアとドアフレームを、寸分の狂いもないようにぴったり合わせる職人仕事が歯医者さんの役割です。一方、柱や建物の構造を調整するのが「整顎」というプロセスなのです。

いずれにしても、歯というパーツ単体ではなく、顎関節や骨格など、体の根本に目を向け、『木を見て森を見ず』のように部分的な見方にならないよう、全身を診ていく必要があるということです。
 

体の不調の原因は顎の不具合にあるという考えのもと、顎に重点を置いて全身の骨格を正常な状態へと整え、体の不調を改善することを『整顎(せいがく)』といいます。

アメリカでは、顎の矯正はもちろん、顎に関わる首、背骨、骨盤などを整えて症状を改善する研究が進んでいます。私はアメリカでカイロプラクティックのドクターの称号を取得しましたが、日本に帰国して実際にアメリカで学んだ療法を試したところ、体の不調にお悩みの方を快方に導くことができ、手応えを感じました。顎の不具合にお悩みの方は症状が改善し、自覚症状のない方でも、首、肩、腰が改善したという例が数多くあります。

当時は顎を専門にしようと思って勉強したわけでありませんでした。しかし帰国後に、「顎を正常な状態にすることで症状を改善できる、体はより健康に近づく」という発見をしたことで、それをライフワークにしたいという思いが徐々に強まっていきました。
そして帰国して10年目の今年(2014年)、『整顎』という専門分野として取り組むことを決意したのです。
 
  『整顎』と体の不調との関係
  

私たちは、話したり食べたりすることで毎日口を動かします。今まで口を動かしてきた負担は、確実に蓄積していきます。そして、現代人の95%以上は顎に不具合があります。
施術を行なう際、まずは検査を行ないますが、検査結果にまったく問題がないという方は100人に1人ほどしかいらっしゃいません。
 

おかげさまで、私の院では、患者様から毎日のように「顎関節症や噛み合わせを改善したら、肩こりや頭痛が治った」という喜びの声をいただいています。「奇跡のようだ」と言う方が多くいらっしゃいますが、治療従事者の立場から見ればそれはごく当然のことです。

顎、首、肩は筋肉組織でつながっています。たとえば、顎と肩甲骨は肩甲舌骨筋(けんこうぜっこつきん)という筋肉を通してつながっているので、『整顎』によって肩甲骨周辺や背中の痛み、肩こりなどが改善されることもあります。
 

ごくまれに、「整顎だけ受けたい」という患者様がいらっしゃいますが、基本的にそれはお断りしています。それは、顎だけを施術しても、結果に責任が持てないからです。ゴッドハンドではないので、1回で効果を表すことは不可能です。

本協会では、整顎のコースの場合6回通っていただきますが、顎の施術は最後に仕上げとして行ない、それまでは、脚、膝、骨盤、背中などを整えます。

これらのどこが歪んでも体は傾きますが、たとえば肩や骨盤が右上がりになっていれば、頭を左に曲げてバランスを取ろうとします。そうるすと顎や首に不具合が生じてしまうのです。

先ほど、「現代人の95%以上は顎に不具合がある」と述べましたが、私自身も例外ではありません。
講演会やセミナーなどの講師を務めるなど、話すことも仕事ですし、施術の際に前屈みの姿勢になったり、パソコンで長時間の作業を行なったりもするため、体のバランスが崩れてくるのは当然です。
そのため、私自身も月に2回は体の矯正を受けており、うち1回は顎の施術のみ受けることにしています。
このように、実体験からも、全身と顎を総合的に診る必要性を感じています。
 
  本協会の患者様の特徴
  

老若男女問わず整顎の対象となりますが、本協会にご来院いただく方の80%が女性です。
その理由は医学的なことよりも、メイクなどで鏡を見る時間が長く、顔のバランスなどに気づきやすい、という点にあります。また、骨格が細いため、筋肉の不調が緊張につながって負担になる、ということもあげられます。

ちなみに年代は、30~40代の方が多いです。
私たちは話したり食べたりすることでよく口を動かします。そのため、顎の関節は体中のどの関節と比べても反復運動が圧倒的に多いのですが、女性の患者様が多いのは、女性がおしゃべり好きだからかもしれませんね(笑)。
 

女性のなかには、妊娠・出産を経験する方も多くいらっしゃいますが、分娩時の食いしばりや産後の骨盤の歪みは、顎の不具合につながります。妊娠・出産の前後ではおなかの重みや背骨のカーブも変わるので、出産後の女性が来院された場合は、とくに背骨を丁寧に診ることにしています。

妊娠・出産を経験された方、特に20代後半から30代の女性に多いのですが、出産後の環境は、大きく変化します。お子さんを抱くので肩こりや手首の痛みが出てしまう方も多く、それらの改善も行なっています。
 

最近は男性も増えており、特に奥様のご紹介でいらっしゃる方が多くいらっしゃいます。
男性の場合、不具合に気づかず見過ごしてしまうことも多く、不具合に気づいても「そんなに困っているわけではない」と後回しにしやすい傾向にあるため、女性の患者様よりも来院が少ないと考えられます。
 
  職業と顎との関係
  

アスリートの顎には、ほぼ不具合があるといえます。特にプロの方のなかには、それを自覚している方が多く、競技によっては、マウスピースする方もいらっしゃいます。

約60kgの骨格の方の場合、インパクト(衝撃)の瞬間顎にかかる力は、約300~900kgほどです。顎を食いしばることで体の動作のスイッチが入るので、無意識に力が入るのは当たり前です。野球の王貞治選手の奥歯はボロボロだった、という話もあります。

最近周知されてきましたが、逆に顎をリラックスした状態にできないと、腕の振りが悪くなるなどのマイナス要素が出てしまいます。
たとえば陸上選手の場合、従来は歯を食いしばって走っていましたが、ウサイン・ボルト選手は口元を緩めて走り、フローレンス・ジョイナー選手は、ニコッと笑いながらゴールインするということで話題になりました。

顎が緊張し続けた状態のままで、力を緩めきれないと、パフォーマンスが落ちてしまいます。顎にかかる力には、メリハリが必要なのです。

当院には、格闘家や直接打撃を受けるキックボクサーなども来院されますが、繰り返し顎に力がかかるため、改善が難しいのが現状です。
引退されれば、現役時代ほどのダメージは受けないかもしれませんが、今までのダメージがかなり蓄積されているはずなので、引退後にも来院していただくことをお勧めしています。
 

当院にお越しくださる方のなかに、ボイストレーナーの方がいらっしゃいます。その方はアーティストでもあるのですが、ライブの前後に整顎を受け、背中、肋骨(あばら)、横隔膜などを緩める施術も受けられます。

また、世界的なバイオリニストの方も来院されます。バイオリンは顎で支える楽器であるため、その方の顎にはとても片寄りがあり、首や頸椎にも不具合が生じていました。

しかしご本人には、顎周りの自覚症状が全然なく、自覚されているのは、ばね指(腱鞘炎の1種)で指を動かしづらいということだけでした。指の神経は首から出ているので、首の施術をパッと思いつきましたが、まず膝や骨盤など整え、最後に顎の施術を行なったところ、「とても良くなりました」とお褒めの言葉をいただきました。
 

吹奏楽など吹く楽器を演奏される方などは、慢性的に頬や顎に大きな力がかかっています。
これは、アスリート、歌手、アナウンサー、大学教授、同時通訳など幅広い職業の方に当てはまります。
当院の患者様のなかにもそれらの職業に就いている方がいらっしゃいますが、職業柄、顎がダメージを受けてしまうのは避けられません。その方々を診ていると、日々のダメージの蓄積が、どれだけ顎に悪影響を及ぼしているかを実感できます。

今まで「どこで相談したらいいかわからない」「どこへ行っても良くならない」とお困りだった方に『整顎』の施術を行ない、顎の不具合、肩こり、腰痛などでお悩みの方を1人でも多く救うことが私たちの願いです。